君は守るために嘘をついた。
 じゃあ、僕はどうすればいい?
 歩み方も何もかも知らないというのに。
 僕は、どんな風に君を守ればいい?



                  寂しい嘘


 その人は寂しく笑った。そして、今度こそみんながちゃんと知っている「彼女」を、完璧に作って笑った。
 その姿は痛々しくて、言葉なんかには表せなかった。

 恐らく、その微細な変化に気付いたのは彼ぐらいだ。
 痛くて仕方ない。けれど、自分が指摘して何になるのだろう?
 だから、彼も何も言えなくて、同じように「彼」を完璧に演じて笑って見せた。

「それじゃあ、行こうか。邪魔しちゃ悪いよ」
 邪魔しちゃ悪い、というのは、彼女たちの仲間である二人組のことだ。
 流れるような輝く金髪の持ち主と、太陽の笑顔を持つ茶髪の、まだ青年と呼ぶには早いあどけなさが残る少
年。
 幸せそうに笑っていて、今このときの為だけに世界はあった、というほどだ。

 「そうね」とか、「行こう」とか聞こえる中で、彼女は一番最後に並んだ。
 彼は、彼女の数歩前にいたが、彼女の数歩後ろに並んだ。
 

「あいつらサ、幸せそうでよかったじゃないか。あたしも、あいつらが幸せそうで嬉しいよ 」

 独り言のように、隣に並んでいる青年にしか聞こえないぐらいに彼女は呟く。
 その顔は少し俯いているけどやっぱり笑顔で、彼は「嘘吐き」と苦々しく心の中のみで呟いた。

 彼女は「嘘つき」より「嘘吐き」の方が近いと、彼はいつも思っている。
 上手に、自然につくくせに、そのくせあとで堰を切ったように全部、彼女が思うところの、誰も知らないと
ころで吐き出すのだ。
 綺麗に出たはずの嘘は、彼女自身をずたずたに切り裂いて、まさに「吐く」という現象そのものぴったりに
ぼろぼろにする。

 何時だって嘘吐きの彼女は、嘘をついた人じゃなく自分を傷つけるのだ。
 彼女が立ち上がれないように。



「…ねえ、しいな」
「何サ」
「どっか、行っちゃおうか?」

 ぎゅっと、幼い子供のように帯の端を軽く引っ張って。
「は?」
「良いから、行くぜ!!!」
「きゃあっ!!」
 今度は腕を思いっきり引っ張って、前を歩く仲間達からはずれる。

 吐き出してよ全部全部。
 君じゃなくて僕が受け止めるから。
 彼を守るのも良いけど、たまには自分を傷つけないで。


 寂しい嘘は、僕を傷つけるためだけに吐いて。

 それが僕の君の守り方。









 私がゼロしいを書くと、ゼロ→しい→ロイコレが多いのは、多分原作設定をなかなか
捨てきれないからです。
多からず少なからずともしいなはロイドに好意を抱いていたわけで、どうしてもそれを
汲み取ってしまうのです。
 ゼロしいは大好きなのですが。