ただそれが辛かった。





            連れて行かれる




 夢を見た。
 真っ暗な闇の中、細かい粒子のような光がちらついて、そのなかに自分だけがいる。自分の髪の色か、はたまた血の色か。
 赤い色がその光と世界を染みつかせていった。

 誰かの、名前。
 それを呼んでいたんだ。ずっと。
 声を必死で絞り続けて。
 伝わらないと分かっていたのに。
  本当は誰より大切だった人。
 また、名前を呼んだ。
 何人もの名前を。
 順に順に。

 でも答える人は一人もいなくて。



 最後に、たった一人の名前。
 
 

 その言葉を口にしたら、ひどく楽で。
 でも咽が焼ける気がした。
 
 ふいに何かが自分に触れる。
 誰かの、手。
 でも知っている。これは―。

「――!!!」

 引き込まれていく。
 暗闇に。
 誰の名前を呼んでも、それに振り向く人はいなくて。
 見えるはずの人たちは自分を見ていなくて。


 一番欲しいはずの人は、誰かと一緒にいて。

 ねえ、振り向いて振り向いて振り向いて。


 ほら、連れて行かれる。



「…夢、か…。」
 あんなに夢見の悪いものを見たのに、自分が冷静だったのに驚いた。
  いや、意識だけが。体はシーツが張り付くほどに汗で濡れ、呼吸は今までしていなかったかのように激しかった。
 体とは相反して、意識のみがただ冷静だった。
 それとも、知っていたのかもしれない。
 その、理由を。


 ドアを叩く音がした。
 そして、愛しい声。

「ゼロス、起きているの?」
「…せんせえ…。起きてるよ…。」
 その声はこんなときでも優しく自分の心に染み渡る。
 なのに、何故か苦しくて。
「入って良いかしら?」
「…ああ。」
 今入られたら自分が何を言うかなんて分かり切っているのに。
 自分が壊れてしまうことぐらい分かっていたのに。
 なのに、求めてしまう。

「失礼するわ。」
 自分の方にくる彼女は幻のように見えて、すぐに消えていきそうな気がする。
 実際は、すぐ消えるのは自分の方だというのに。

「…ひどい汗よ。熱でもあるんじゃなくて?」
「…ねえよ。」
 ねえ、いなくなってここから。じゃないと貴方をボロボロに傷つけるから。じゃないと貴方は壊れてしまうから。
  じゃないと俺が壊れてしまうから。

「じゃあどうしたの?」
「なんでもねえって!!!!とっとと行けってば!!」
 ねえいなくなってはやくここから。じゃないと貴方を壊してしまう。
  だから、俺なんか見ないで早くここからいなくなって。
 
「…私がその程度でひるむと思って?」
 嘘つき。震えているくせに。本当は怖くて逃げ出したいくせに。
 意地を張るのは貴方の悪い癖だと思う。

「貴方の痛みは私の痛みです。私の痛みは貴方の痛みです。だから…話して頂戴。」
 もう一つあった、貴方の悪い癖。
 誰にでも優しいから、誰も突き放そうとしないこと。

「先生、はさ。」
「何?」

 ほら、だから甘えたくなるんだ。

「例え話だけど。ある人がひとりぼっちになったとする。
 その人の心のよりどころだったやつらはみんなそいつから離れていった。いくら泣こうか叫ぼうがだ。
 そしてそいつはその世界に絶望し、死んだ。
 けれど、もしそいつが知らないヤツか気にもとめていないヤツがそいつを心のよりどころとしていたとする。
 けれどそいつを必要としてくれるのはそいつたった一人だ。対して知らない、嫌いなやつかもしれない。
 それでも自分のために泣いてくれる人がいればそいつは生きるべきだったと思うか?」
「……。」

 自分でも分からないものを、他人にふっかける。
 ひどく残酷だと思う。
 貴方は壊れてしまうだろうか。
「つまり、貴方は、何が言いたいの…?」

 けれどほら。賢い貴方はすぐに真理に辿り着く。
 だから優しく笑って言うよ。

「ん?俺様が死んだら、先生は泣いてくれるかってこと。」


 例えば例えば例えば。

 もし俺が死んだら、貴方は俺を必要だったと言ってくれますか?
 俺の全てを知った上で、それでも泣いてくれますか?
 自分でも嘲け笑う自分のために、泣いてくれますか?

「俺の夢じゃ、先生は他の誰かと一緒にいたんだけどね。」

 夢は非道く残酷で。
 呼び続けた母は血で塗られ仲間はいくらよんでも振り向きもしない。
 真っ暗な中声がかれるまで叫び続けた。
 最後に呼び続けた貴方は、誰かと共に歩いていった。
  暗い中何を信じて良いか何が真実なのか分からずただひたすら呼び続け、気付けば自分で自分を殺していたのだ。
 そうして、闇に引き込まれる。

 ねえ、貴方は。
 夢と違うと信じて良いですか?

「決まっているでしょ。」
「ん?」

「泣くに、決まっているじゃないのっ…!!!」
  声が震えているから、自分が許しを請うべきことをしたと悟る。
 何もこわくて言えないから、ただ震える貴方を抱き寄せた。

 その言葉と、震える貴方を信じるべきなのか、気休めだと笑うべきなのか、俺には分からないけれど。

「…じゃあ、俺様はまだ生きるよ。」


 例えば例えば例えば。

 誰かに何かに連れて行かれそうになったとき。
 自分で自分を殺そうとするとき。
 貴方と自分の信じられなくなったとき。

 その言葉と震える貴方を思い出して信じてみようと思う。


 貴方とともに生きていけるように―。









  後書き(いいわけ?)
  
 えー…。
 すいませんでした!!
 本当は甘々ゼロリフィかこうと思ったのに!!
 何で私がかくとこんなに暗い!!
 びっくりですね!
  素敵大好きサイトさまの超絶素敵ゼロリフィに触発されて書いてみたのに…!!
 あ、足下にも及ばないできだ…!
 うちのゼロっさんのネガティブ具合が原因だとは思うのですがね。
 むしろ小福の思考の問題か。私はゼロスをなんだと思っているんだろう…。
 アホ神子?(まてい。)ネガティブ見守り隊隊長でアホ神子です。(キャラの掴みようがないよ!!)
 これ、実は夢シリーズです。他のバージョンもあります。(あるのか。)
 恐れ多いながらにこれをかくきっかけとなったサイトさま、ギミックテクノロジー本社さまに捧げます!!
 よよよ、よろしければもらってやってください!!
 返品ゴミ箱いつでもOKです!

  自作お題11、連れて行かれる