つかえる 吐いて吐いて吐いて吐いて。 すでに吐くことは日課みたいだった。 戦闘し終わった後に吐いて。 (血の匂いが消えないんだ) 食事をした後吐いて。 (生き物を喰らっているんだと思ったら吐いていた) バスタブの中に吐いて。 (むせかえるような花の匂いが血の匂いと混じって) 鏡を見たら吐いて。 (これは俺の顔じゃ、ない) 日記を書こうとしたら吐いて。 (何も書きたくない) 寝ようとしたらまた吐き気が襲って洗面所ですがるようにして吐いた。 胸につかえるものが出ない。 つかえているのは食事したものとかじゃないことぐらい知ってる。 吐き出しても吐き出しても出したいものは出なくて。 吐くものがなくなって胃液を吐いた。咽が灼ける。苦しくても苦しくても悲しくても 悲しくても吐き気は消えなくて。 吐き気の次は、痛みのあまり涙がこぼれた。 「ごめん…なさっ!」 「ごめんなさい…」 繰り返す。呪詛のように。 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいゆるしてなんていわないから。 そのとき、何かがぷつんと切れた。 「おれが、ほんとに、ゆるしてほし、いのは…」 師匠。 ヴァン師匠。 ごめんなさいごめんなさいうまれてきてごめんなさいあなたのやくにたてなくてごめ んなさいおろかでごめんなさいにせもののくせにあなたをすきでいてごめんなさい どうしようもなくすきでごめんなさい あなたにとっておれはやくたたずでじゃまでくずなのに 「せんせい…ごめん、なさ…」 そう思った瞬間、どんどんどんどん涙が溢れた。俺のものじゃないみたいに。 ありえねえよかっこわりい、なんて思っても止まらない。裏切られておいて、と誰か の声が俺の中で俺を蹴りとばす。けど俺の中で師匠の優しい記憶は消えない。 我が侭な俺に剣術を教えてくれて、世界のことを話してくれた。いつも俺を見てくれ てた。たとえそれが俺が死ぬときのためだったとしても。そんな師匠が好きだった。 大好きで大好きでたまらなかった。 すきすきすきすきすきすきすきだいすきだいすきだいすきだいすきだいすきだいすき あのころの俺の感情で、それだけはまっすぐだった気がする。兎に角師匠に認めても らいたくて師匠が好きで。 でも俺は認めてもらえなくて。 あなたが俺を望んでつくったはずなのに。 ねえ、いらないの? 俺は、あなたに仕えたかった。 思った瞬間に、自分の体がやけにちっぽけに見えた。生まれたての子供みたいに頼り なくて不安げな。 そんな体全体に感情がつかえて、身動きできない気がする。 きっと、最後はこの感情に、あの人に続く感情に殺されるんだ。 あの人に殺されるなら悪くないかもしれない、なんて思ったらまた吐いた。 きっとこのつかえは呪縛。 意味不明な感じの話で失礼。 でもこういうのを書くのが好きです。ヴァンルクも好きだって言いたいですが、絶対 ハッピーエンドにはなりませんよね。 ヴァン師匠め…! あんな風に言うならルークを私によこせ!! (何故そうなる)