Sugar and spice And aii that's nice 「帰りたいかって…かえれる、のか?」 ひどく困惑した様子で、ルークは問いに問いで返した。エメラルドはおよいでいる。 「帰れるよ」 ルークの声色とは正反対に、随分あっさりとした様子でローレライは答える。その言 葉は明確なものだ。 「けれど、帰るか帰らないかはルーくんが決めることだ。人殺しの複製品の名を背負っ てまで、あの場所で生きるかも」 そのローレライの言葉を聞いた瞬間、ルークの脳内に、とてつもない量の情報が流れ 込んできた。それはルーク自身の記憶であり、アッシュから見たルークでもあって、ル ークは愕然とした。逃げてきた訳じゃない。けれど、今一度全てを振り返れば、ルーク の心はぺちゃんこになってしまった。追体験というものは、恐ろしいことなのだと初め てルークは知った。 人殺しの複製品。 その言葉を、ゆっくりルークは反芻させた。最初に殺した騎士。生々しい、人の肉を つきさす感触。アグゼリュスで殺した山ほどの人々。障気の中で苦しみながら死んでい った子供。死んだ目をしていても、生きることに貪欲だった一万人の複製品。それぞれ の信念を掲げた六神将たち。大好きだったヴァン。 それらは全て、ルークの勝手で殺したのだ。いくら理由があったって、ルークが殺し たのだ。 「おれは、おれは…」 頭が、ずきずきと痛んだ。アッシュやローレライと通信するときみたいに。 そうだ、あっしゅ。 てぃあ、がい、なたりあ、じぇいど、あにす、みゅう、みんな、みんな。 ルークの脳内に、情報の中でも映っていた皆の姿が浮かんだ。大好きで、大切な姿。 「俺は、それでも」 「みんなに、仲間に会いたい」 ルークは泣いていた。なんて自分勝手なんだろうと思いながら、泣いていた。滴はぼ ろぼろと溢れて頬を伝った。懺悔しながら、泣いた。 「もう一度会うって、約束しちまったから」 指切りをしない約束を思い出す。でも確かにあれは、本当に大切な約束だったのだ。 「…そうか」 「じゃあ、ルーくんも、お帰りなさい」 「え…?」 「帰してあげるから、もう、お休み」 「へ」 「…お休み」 ルークの意識は、ぷつんととぎれた。 「…でもねルーくん、ルーくんが一番殺しちゃいけなかったのは、前のルーくんだった んだよ」 ローレライの声は、誰にも届かなかった。 一話一話が短くなっていますが気にせずどうぞ。 薄暗く、コメディで。(自己暗示)