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そんな優しさなんて丸めて捨てろ 何時だったそうやって笑ってみせるんだろう。 でもそれは、優しさ? 彼の複写人形は、よく笑った、それは彼からすれば考えられないことだったから、い つもその笑みを見るたびに苛々が募った。 でもいつからか彼の笑みは変わった。誰といても何を話していても、悲壮感漂うもの に変わっていたことを彼は知っていたし、その理由だって知っていた。あまりにもルー クが感情を抱えすぎると、その波があふれ出してアッシュへと伝わる。 感情の洪水。 その威力に敵うものは存在し得ないと思う。あっという間にアッシュを飲み込み溺れ させる。その洪水の中でアッシュはどうしたらいいか分からなくなる。 嬉しいよ (でも悲しいんだ) みんな笑ってくれるから (でも俺は笑っちゃいけないんだ) ありがとう (そしてごめん) 此処に入れて嬉しいんだ (でも悲しいよ) 生まれてきて良かった (生まれてきちゃ、いけなかったのに) 洪水の流れは再び大きく波を立てる。かと思えば、それはどこか深い感情ばかりが交 じり合った笑い声で消された。洪水はルークの元へと急速に戻っていく。アッシュの中 には僅かに滴のみが残った。 その滴は脆く、すぐ蒸発してしまう。けれどその瞬間に僅かに光ったものはルークの 根底なのだと彼は思う。 (でも、幸せなんだよ?) きらきら光って消えた。 その感情が根底にあるからこそ笑うのだろう。大切な人たちには悲しい顔を見せたく ないと笑うのだろう。それは本心で、優しさなんだろう。 自分には決して出来ない。 でも、その根底の上には幾つも幾つも感情が重ねられている。相反する感情ばかりが 重なっている。めばえ始めた幸せを自身でつみ取り否定する。 完全同位体とはいえ、どこまで似れば気が済むのかと思う。 つみ取る、つみ取る。 そうじゃなきゃ、憎めないから。(そうじゃなきゃ、あのことを忘れそうだから) 一人は憎むため、一人は忘れないためにつみ取る。 そして一人は、つみ取ったあと笑ってみせる。 心配しないで大丈夫だよなんて言いながら。 それは優しさなはずなのにどこか苦しい。 嗚呼、そんな優しさなら丸めて捨ててしまえ。 (苦しめて、首を締める優しさなんて) 丸めて捨てて、貪欲に生きればいいのに。 (そうすれば、もう一度殺したくてしようがないほど憎むのに) 意味不明なアシュルク。 その優しさはアッシュにもルークにも仲間にも痛いという話。