鎖は生まれた鍵は壊れた セネルは夢を見ていた。 それはそれは穏やかな夢で、まるで漂っているかのようだった。気持ちが良いと目を つぶると、瞼ごしに光が見える。 その柔らかな光に目を開けた。 「ステ、ラ…?」 光の正体は、女性だった。 彼の大切でいまはもう存在しえない人の内側から、光が滲み出ている。柔らかな、蛍 を彷彿させる光。 女性は只穏やかに微笑んで、セネルを見つめている。セネルは驚きばかりが先に出て きたが、これは夢なのだからと、セネルも微笑んで見せた。 女性は、より一層幸せそうに穏やかに笑った。 だからセネルも笑った。そして、触れようと手を伸ばした。 けれど、女性はその手に触れようとしない。唇だけで、「だめ」と制して、悲しそう な表情で笑った。 「駄目って何が…」 言葉を紡いだ瞬間、唇に細い指先が触れる。そして女性は彼の頬に手を寄せ、耳元に 唇を寄せる。 「忘れないで」 それだけつぶやき、光は消えた。 「ステラ…!!!」 彼の頬では、透明な液体が流れては落ち流れては落ちを繰り返していただけだった。 鎖は生まれ、彼の中の鍵は壊れてしまった。