さあ、ほら手をだして。 連れて行ってあげるから。 ねえ、ここにはくるしみなんてもうひとつも 清潔な傷口 『貴様なんぞ、もういらない』 『やはり劣化品は劣化品だったか…つかえない』 『何を、考えているの?』 『…これだから は』 『幻滅、』 『いいかげ…に』 『馬鹿、』 「…うわああああっ!!」 ルークは叫んだ。体中がガクガク震えた。力が全く入らない。目の前が白く、チカチ カする。 彼が鮮明に見えていたものは今ではすっかりぼやけてしまって、世界というものが分 からなくなる。何が確かだった? 何が本当だった? 考えてみても脳の奥はもうとっくに溶け出していて、ぐちゃぐちゃだ。分かるはずが ない。判断する回路も、当然めちゃくちゃになっている。それどころか、思考回路の全 てが上手く働かなかった。 怖い。 いやだ。 たすけて。 「…俺、俺、」 舌が上手く回らなくて、拙いしゃべり方になる。ルークは頭を抱えた。朱色の髪が視 界を邪魔する。すだれのような髪の毛ごしに見える世界はやはりぼんやりとしていた。 鮮明なものなんて何一つとしてない。手のひらが生ぬるい液体で濡れているような感触 がした。(初めて人を斬ったときの、あのときみたいに) 「…たすけて」 何が間違っていたのか。 生まれたときからだったのか。 「だれか、」 体の奥の方は酷く熱いのに、外側は冷め切っていた。熱いのか寒いのかも、全く分か らない。質の悪い風邪を引いたような感覚。 ふいに、それにもう一つがプラスされた。 「…やっと、呼んでくれた。俺の『ルーク』」 がたがた震える体を、抱きしめる感覚。頭を抱えていた手を下ろし、その腕と声の持 ち主を見上げた。 同じ、顔が。 「大丈夫、もう何も考えなくて良い。俺が全部から、守ってやる」 自分と全く同じ顔が底にある。自分より、少し穏やかな顔つきだけれど。彼は視線が 合うなり、ふんわりと微笑んだ。綺麗な、優しい笑顔だ。 「…だれだよ、おま、え…?」 恐る恐る、ルークは問うた。自分と同じ顔と言うことは、アッシュとも同じ顔という ことがイコールで繋がれる。ただ単純に、怖かった。 「ルカ。お前と同じ、レプリカのルカ。ほら、俺の手を、とって」 言って、ルカは笑った。困惑しているルークをよそに、手を差し伸べる。グローブが はめられていない手は白く、傷が目立っていた。それとルカの顔を交互に見て、ルーク は戸惑ったように、何か口をもごもごと動かし、 ルークは、その手を取った。 「おやすみ、ルーク」 ルカはやはり、綺麗な顔で笑っていた。 ルクルクです。 やはり今回も、短髪の名前はルカです。 また薄暗いお話になりますが、お付き合い下されば幸いです。