また朝が来る。何時だって。 おはよう 「セネル、セネル、セネル」 「貴方は本当に寝るのが好きね」 「おやすみなさい、セネル」 「大好きよ、セネル」 「愛してるわセネル。誰よりも」 お願いだから。消えてしまわないで。どうかどうか。 ずっと俺を照らして。 ずっと俺の傍にいて。 何で、この手は。 望むモノを守れず、届かないんだろう。 「……っ!!!」 自分の飛び上がる音だけが、やけにその場に響いた。体中に汗が滲み、呼吸がどんどん締め付けられていく。心臓の音 が、自身の中でどんどん加速しては焦らせる。 「ステ…ラ…」 乾ききった口内から、必死で声を絞り出す。締めつけられる。寝起き特有のけだるさが彼を襲う。頭がぐらぐらする。 でも、そんなことはもはやどうでもよかった。 何よりも夢のことが痛かった。何よりもそこにまず意識が運ばれた。いつもいつも何時だって。繰り返すのはその夢。 それが苦しくて苦しくて仕方ない。 見ているときは、幸せな夢だ。ステラはいつも笑って傍にいる。だから自分もそれに浸って、ステラの手を取り、そっ と笑う。彼女は何時だって、自分の望むものをくれたのだ。自分が笑えば彼女は笑い、小さく頬に口付けを落とす。それ が恥ずかしくて、嬉しくて自分は彼女に頬を寄せ、額に小さな音を立て、自身のそれを優しくぶつける。 全てそれは事実だった。幸せすぎる、どんな夢より甘い過去だった。 けれど、過去だ。それがフラッシュバックしているだけで、望む彼女は何処にも居ないことを知っている。それを思い 知らせるかのように、夢の終わりは笑っているステラがどんどん遠ざかっていき、手を必死に伸ばす。 そして届くというその瞬間。 消える。 光の粒子となって帰って行くように、彼女がいたという欠片も残さずに。目を必死でこらせば、彼女が好きだと言った 白い花だけが、届かなかった彼女の変わりに、一輪手に残っている。でも彼女が居たと言うことだけは確かで。 彼女の温もりが残っている手のひらを、白い花は体温を奪い、こぼれ落ちた液体が温もりとは違う熱を持たせた。 彼女が傍にいる感覚がするのに。それなのに見えない。声が聞こえない。只、彼女が自分を包んでいる感覚だけがして、 そのうち真っ暗な中にいる。 「ステラ…!!!」 彼女の名前を夢の中の自分が口にした瞬間、夢は覚める。 いないのにいないのにいないのに。 何でこの夢ばかり繰り返してみるのだろう。幸せな夢な分、失ったとき、覚めたときの喪失感が大きく、暗い暗い闇の中 へ落とされていく。 お願いだから、「おはよう」と言って。 優しい手で、頬を撫でて。 いつものように、笑って。 それすら叶わないから、誰にも聞こえないおはようを、おやすみの代わりにささやく愛の言葉のように、そっと呟くしか できない。 それでも、君だけに届けばいいと思う。