罪にナイフを(ながれるちさえ)


                「…ルーク」
                「あ、ジェイド」
                 ドアからジェイドの顔が覗くなり、ルークはある物質を投げた。それはすんなりジェ
                イドの手のひらに収まる。ずっしりとした重みは冷たい。

                「…撃って、くれなかった」
                 当たり前だと、ジェイドの唇は紡げなかった。この銃を作ったのは他でもないジェイ
                ドだ。
                 ガイは今頃、ひどくうちひしがれているだろう。今の「ルーク」が生まれてからの自
                分全てを悔やんでいるのだろう。ガイを直接的に傷つけたのはルークだけど、それに協
                力したジェイドも、片棒を担いのといっしょだ。
                 自分もどこかで思っていたのかもしれない。もしかしたら、ガイがルークを撃つ確率
                だってあると。彼の生涯を思えば、その確率がゼロな訳がない。

                「俺に生き方をくれたのはガイだから、ガイになら全てゆだねて良かった。でも、ガイ
                はそれがいやなんだってさ」
                 ルークのその感情はこどもの本質だと、ジェイドは思う。こどもはまわりの大人から
                与えられたものを甘受することしかできない。こどもの世界は大人が作る。
                 だから、こどもは大人が作ったものを受け入れるほか無いのだ。

                「…生き方をくれたのはガイだけど、俺の命の元を作ったのは、ジェイドなんだよな」
                 フォミクリーの技術と、それによって生きているこども。それを間近に見ることによ
                って、いつもジェイドの胸はどこかしら痛かった。今だって、そうだ。

                「いっそ、本当は、いっそ」

                「血も出ないようにして欲しかった。人間でいられないなら、本当に人形同然の方が良
                かった。中途半端に人間だなんて、ありえねえっ」
                 ルークの声は、内容とは反対に、ひどく冷め切っていた。全て激情にゆだねたわけで
                もなく、諦めて絶望に染まるでもなく。
                 冷め切っていて、透き通っていた。


                 きっとこの台詞は、あのときフォミクリーの研究を始めたときから聞くことが決まっ
                ていたのだろう。

                 彼は今、ジェイドを壊す台詞を贈った。