君が照らせないなら僕が照らすよ

 誘拐されて帰ってきたルーク・フォン・ファブレはずいぶんと変わってしまった。
 まるで赤子のようになってしまったのだ。それに母親は嘆き悲しんだ。ガイはそれか
らルークの世話係として働いたが、ルークに自我のようなものが目覚め、言葉を覚えた
頃、不思議な光景を見たのだ。
 ルークの部屋の中から、笑い声が聞こえてくる。それはルークのものなのだが、他に
誰も見受けられない。その異質な雰囲気に思わずガイは身を潜め、隠れるようにのぞき
見た。
「…うん、そうだな。…やっぱりそうおもうだろ? …へえ、ほんとう、いっぱいしっ
てるんだな! …ははっ、へんなの!! おもしろい!」
 頷いたり、笑ったり、手を叩いたり。感嘆を漏らしたかと思えば、笑う。まるで、誰
かと話しているようだが、誰もいないのだ。

 不気味だ。
 
 ガイはそう思った。彼に非道い頭痛が起こったり、幻聴が聞こえたりするのは知って
いた。でもそれは医者曰く、脳内から記憶を戻そうとするのと、それを拒絶することに
よって起こることらしいと聞いていた。誘拐時の声が呼び起こされ、その恐怖が呼び起
こされるのを拒む防衛反応だから、仕方ないと。
 だからそれに対してはどうも思わなかった。けれど、これは、異常ではないか!!

 それ以来あの光景は、ルークがはっきりと自我を持つまで一、二度見た。何度見ても
異常だったが、それ以来ガイが見ることはなかったから、ガイはとりあえずは安心して
いたのだ。…うわべだけのそれで。

 それをもう一度見ることになるとは思っていなかった。
 しかも、こんなはっきりとした形で。

 ルークは操られ、アグゼリュスを崩落させてしまった。皆が罵り、彼を見捨てた。
 そして、ユリアシティでアッシュが告げた瞬間、起こったのだ。
 そのときルークは半狂乱で、只恐怖に震えていた。ぶつぶつと何か呟いていると、あ
りえないことが起こった。
 ルークが意識を手放したかと思った瞬間、何もしていないのにルークの朱の髪が短く
なったのだ。
 ルークはそのまま立ち上がると、ふわりと笑った。

「初めまして。とりあえず、アッシュ、やられて頂戴?」
 それだけ告げるとルークは目にもとまらぬ速さで剣を取り、アッシュの僅かに除く喉
元に向ける。アッシュが剣をとろうとすると、ルークはアッシュのみぞおちに、右拳を
入れた。恐ろしく鈍い音がしたあと、アッシュは倒れ込んだ。
 
 アッシュを運んだ後、皆は呆然としていた。ルークが、彼らの知っているルークでは
ないのだ。彼らの知っているルークは、傲慢でこどもだ。何も知らない。
 けれど今彼らの目の前にいるのは、世の理を全て知ったような表情をするルークだ。
 見た目すら違うのだ。腰よりあった長い髪は今はなく、肩に掛かるか否かのところで
止まっている。少々たれていた目は大きく丸い。こどものように。
 
「改めて初めまして、ルーク・フォン・ファブレです」
 にっこりと人好きされる笑みで自称「ルーク」は笑った。
「…あなたは、一体だれなの?」
 ティアがおそるおそる聞く。ルークは当たり前に答えた。
「だから、ルークだって」
「そういうことじゃなくて!!」
 ティアが少しだけ声を荒げると、ルークは諦めたように淡々と告げた。

「…俺は『ルーク』の一部。けれど全く違う存在。
 『ルーク』の手、足、目、鼻、脳であり全てであり、『ルーク』そのもの。
 そして、『ルーク』の光」
「…つまりは?」
 ジェイドが再度聞く。

「『ルーク』は、俺がいなきゃ生きていけないんだよ」
「今、『ルーク』は傷ついている。俺が護ってあげられなかったから…。
 だから俺が出てきたんだ。あいつは、休ませてあげなきゃいけない、殺される前に」
 もう一度笑った。

「今度こそ、護ってあげるんだ」
 にっこりと、笑ったのだ。








 
 そんな感じでルクルク。個人的には短髪×長髪だよ。
 二重人格って言うか、マテリ○ル・パ○ル。
 暗いのかダークなのかもう何が何だか…。