|
この身を不浄と知ったのは何時だったろうか。 複製品―人外の物質であると知ったのは昔ではない。むしろ最近だ。あの窮屈としか言えない場所を抜け出て、すぐに知ったことだった。 けれど、今思い返しても、知っていたのはもっと昔のように思われる。 複製品という事実だけでなく、もっと本質的な部分で、身を不浄だと思った。血液の流れないからだ、細胞の一遍すら、第七音素で構成される体。確かにその身は不自然極まりない。人工物であるから透明でも有り得ない。 けれども、それとも違う。 (嗚呼、あの日だ) あの日、知ったのだ。 自らが、人間が汚いと知ったのは。 「ルークさま」 突き抜けたように澄みきった青空。その中にある一つ、太陽の日差しが大きな窓から差し込んでいた。僅かに舞う埃がキラキラと光る。 「ルークさま、お食事の時間にしましょうね」 少女―黒髪で、痩せぎすの体の持ち主―は、毛布の固まりに近づく。ベッドの上のそえは、ふるふる震えていた。それに、困ったように少女は笑う。 「ルークさま」 そっと、少女は固まりを暴いた。毛布の固まりだったものの中心には、小さな子供がいる。丸く、柔らかな白い頬。大きめの紅葉のような掌。真ん丸で極上の翡翠のような瞳。夕日のようなグラデーションがかった髪。固まりの奥には、宝物がいた。宝物はふるふる震えている。 ルークは帰ってきた。…変わり果てた姿で。聡明だったあの少年はもう何処にも居ない。此処にいるのは、無力で頼りなく、常に何かに怯えたこどもだけだ。こどもは色を失ってしまっていて、どこまでも空虚だ。本能すら忘れてしまったらしい。泣くことすらせずに、怯えるだけだ。 「ルークさま、大丈夫ですよ」 きゅっと彼女はルークの手を握る。冷たい体温は震えていた。 世界は、あまりに狭かった。 |