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愛を知りません。 与えられていないからです。 いや、正しくは、与えられていたのでしょう。 しかしそれは、壊れてしまいました。壊れたものは戻りません。失ったものはかえりません。 だから、愛を知りません。 一万もの複製品達が、ルークを中心にし、ぐるりと取り囲むような形で並んでいた。彼らはじっと、ルークを見つめているだけだ。 死。 それを彼らが、どこまで理解しているというのだろう。恐らく理解していないのだろうなと思って、ルークは少し腫れた瞼をこすった。 それでも、複製品達は死を選んだ。死の意味なんて大して分かっていないような唇で、理由を紡いだ。 (近すぎる) ルークは思う。劣化した存在であるが故に、常に死と隣り合わせだった。いや、それどころか背中の皮に張り付いている。そんな複製品だから、被験者達からすればおかしく思うほど早く、死を選べたのだろう。 「…いくぞ、」 ルークが呟く。小さな声だったけれど、複製品達は正しく拾ったらしい。小さく頷いた。それを確認して、ルークはぎゅっと瞳を閉じた。眉間に皺が寄せられ、整った眉と唇が歪んだ。 (ください、俺も…消えるから、いっしょに) ふいに叫び出しそうになった。悲痛な叫びだ。けれどそれをルークは叫ばない。喉の奥に引っ込めてしまった。堪えるように唇を噛めば、鮮やかな液体が滑り落ちる。 (この液体すら、血とは呼べない) 第七音素。それだけで構成された体だ。だから今此処に立っている。 生まれたときから、人間ではなかった。 生まれたときから、生きていなかった。 そうしてやっと今、意味が手に入る。 強く、強くルークは剣を握った。どこか祈るような仕草でもある。そんなルークを、まるでかみさまか何かのように複製品達は見つめる。瞳の奥の濁りは消え去っていた。瞳は虚ろではなかった。 そうしてルークが剣を振り上げたその瞬間。 「ご主人さま!!」 聞き慣れた、声が響いた。悲痛な叫びはどんどんルークに近づく。思わずルークは振り下ろす腕を止めようとし、声の方向へと振り向く。しかし、遅かった。もうとっくに舞台は整っていたのだ。 「お前っ…!!」 この馬鹿、そう続けようとした言葉はとぎれた。水色の物体が、逆戻りする。 「ふざけるんじゃねえっ! ルーク!!!」 光がはじけ飛ぶ中、確かにその声は名前を呼んだ。 次回から少しだけ回想編です。 |