きっと、うつくしかったあなたなら
ルーク・フォン・ファブレは―正確にはそのレプリカは、だが―たった一人でその場
所にいた。呼吸を困難にさせるほどの熱気、乾いた地面。美しいなんてお世辞でも冗談
でも言えない場所。
彼は、ある一点をじっと見つめて動かなかった。彼の体で動くのは、瞼だったり薄い
胸だったりで、それらは生きるために必要な、最低限の行動しかしていない。消える気
配のない熱気の所為でじんわりと体中に汗が滲むが、それすらそのままだ。彼は動かな
い。
此処で、彼の知るある一人が死んだ。
その人は、ルークからすればあんまり愚かで、同時に酷く美しい人でもあった。ルー
クと同じ存在であったはずなのに、彼は常に美しく柔らかな光を身に纏い、瞳に宿して
いた。それが、妙に腹正しかったのも、記憶に新しい。あまりにも対極の人。
彼は死んだ。
彼を愛した人物によって、彼が愛した人物によって。
被験者達のために、死んでいった。(音素になって、しまった)
その終わり方は、あんまりに儚くていっそ滑稽にも思えた。虫酸が走るほどに、馬鹿
らしくて愚かしい死因。
ああ、ああやって自分も死んでいくのか。
今後の展開も含めてそう思えば、脳味噌の辺りが妙に冷え切った、変な気分になる。
そのくせ腸が煮えたぎりそうな、不快な気分だった。それらを確認すると、ルークは眉
間に皺を刻ませた。
仮にルークが彼だったとしたら。
それを考えると、きっと、あんな終わり方なんて選ばないとルークは思う。(でも仮
定は仮定であるから、本当のところはよく分からない)ルークの中で自分の命を被験者
だったりこの薄汚い世界だったりを天秤にかければ、天秤の腕は世界を掲げるだろう。
ルークの中じゃ、この世界の価値なんて薄っぺらくて安っぽかった。
彼はもういない。墓もなく、生きた証すらない。人の中に残っている、記憶なんてい
う曖昧すぎて不確かなものだけだ。あのときの音素だって、もうとっくに世界では消費
されてしまっただろう。
そこまで考えて、やっとルークは唇を開いた。口内がカラカラに乾いている。
「お前は、こんな腐れた世界での二年間、世界を愛しく思ったか?」
答えなんて、返ってくるはず無い。それは重々承知で、理性もちゃんとそれを知って
いた。それなのに、問いかけてしまったのは。
瞳を閉じて、見えるものを遮断した。
(おれは、あいせないよ)
だれもおれをあいさないから。
ルークは、もう一度世界を見つめた。
相も変わらず、腐っている。
(そして、おれもまたしにいくのだ。このふはいしたせかいのために)
イルカさまへ、捧げます
※転載、お持ち帰りはイルカさまのみ可能です。
イオ←黒ルク風味です。
イオンと黒ルークは対極であって、対でもあります。
黒ルークというより、厭世観が強めですね。
回答と素敵な台詞、ありがとうございました!!