彼が壊し、彼が愛し


         「…来たか」
          エルドラントの最上階で、アッシュ達を出迎えたのは。


         「…お前は…」

          本来そこで待っているはずのヴァンの骸と、アッシュの複製品ルークだった。

         「…兄さん!?」
          ティアが名前読んだその人から、返事が返ってくることはない。彼はもう血まみれの
         物体となっていて、彼を動かしていた血はルークにたっぷりと付いていた。
         「期待はずれだった。もっと楽しませてくるかと思ったのによ」
          言いつつ、ルークはヴァンだったものを蹴り飛ばす。それはルークによってくわえら
         れた衝撃に素直に従った。彼のブーツに、また血が跳ねる。それを見てティアが身をす
         くめ、悲鳴を上げた。

         「…ローレライは」
          静かな怒りを発しつつ、ジェイドは問うた。赤い眼は酷く冷めている。

         「ん? 俺の中。案外、あっさりと了承してくれたよ。こいつは俺のこと気に入ってい
         るみてーだし」
          くつくつ音を立てて笑った後、ルークは愛おしそうに自身の体に腕を回した。自分で
         自分を抱きしめるような格好だ。それに合わせるかのように、ルークの体は淡く光る。
 
         「…貴方はそれで、どうするつもりですか?」
          また静かに、ジェイドが問う。静かとは言っても、先刻より苛立っているらしく、僅
         かに口調が荒々しい。


         「お前らを殺して、世界をぶっ壊す」
          綺麗に微笑んで、ルークは自身の背から剣を抜いた。それにはヴァンのものであろう
         血がべっとりと付いていて、鈍く光った。

         「…何を言ってやがる!!」
         「考え直して下さい、ルーク!!」 
          アッシュは叫び、それにナタリアも続いた。ガイといえば声を出すことも出来ないく
         らいに動揺していて、アニスは恐怖のあまり咽に言葉が引っ掛かっている。ティアはル
         ークや剣に付いた血と、それの持ち主だったものを見つめるだけだ。


         「世界は俺を見捨てた。だから俺も世界を見捨てる。それだけのことだ。こんなくだら
         ない世界、壊れちまえばいい。お前らと一緒にな」
          ルークは蔑んだ目で皆を一瞥した後、言った。その後両手を広げて、心底楽しそうに
         笑う。その表情は、清々しいほどのものだ。

         「そして、俺がそれをする」
 

          そのとき、皆は悟った。

          彼の壊したのは、他でもない人間なのだと。


          彼の世界は、あまりに狭くて。彼の世界は、それだけだった。
          そしてその世界を生んで壊したのは、ルークを取り巻く人間達だったのだ。
 
          彼に世界を与えて、そのくせ壊したのは、きっと。











         「ああ、これでやっとお前らを愛せる」

          心底愛おしそうに彼は言い、血まみれの物体に唇を落とした。


           それを嫌がるように、彼の体は鈍く光る。
         「ああ、お前の方が、愛おしいよ」
          言いつつ彼が自身の手のひらに口付けると、もう一度彼の体は光った。


          彼は、彼を認めないものを認めない。
           そして世界は、彼が愛するものとなる。

















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         もしかしたら私が書いた中では一番黒ルークかも知れません。 
         むしろ狂い?
         ローレライ×ルーク要素がありますね。グロネタも。
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