思えば、何時だってルークはガイの中では幼いこどもだった。生まれたての雛鳥のよ
            うに、すぐに壊れる上等の硝子製品のように、庇護する対象だった。何時までたっても
            それは変わらなくて、喋れるようになろうが歩けるようになろうが、どんな我が侭を言
            ったりどんなにか大人びたことを言ったりしても、ガイの中でそれは不変だった。

             のびのびとした日の光を一心に受けたことのない白い肌、朱色の長くまるで絹糸のよ
            うな髪、本当の意味での愛を囁いたことのない淡い色の唇、年相応の濁りや汚さがない
            澄みきった瞳。それらの全てが、ガイにとっては何よりも尊く美しい。
             ガイの黒く黒く、どこまでも落ちていこうとする心を引き留めたのは、それだった。


                                                       滑稽で拙いそれを受け止めて


            「ルーク」
             甘ったるい声で呼んで、唇を落とす。ルークはそれを受けて、くすぐったそうに目を
            瞑った。唇は形だけで、ガイの名前を呼ぶ。
            「すきだよ」
                         ガイが一層甘い声で囁けば、ルークの腕がおずおずとガイの背に回される。どこまで
            も遠慮がちなそれを確認すると、ガイは目を細めた。
            「俺の大切な、ルーク」
             鼻の頭に、口付けを落とした。額を小さく音が立つ程度にぶつければ、ルークの瞼に
            よって隠されていた翡翠が現れる。


             その瞳の奥には、昔無かったはずの醜さが見えた。ガイの昔の心のような黒い汚れが
            見えた。それをちゃんと、ガイは知っていた。(だって、与えたのは)


            「俺も、ガイが好きだよ」

             ルークは頬を淡く硬直させ、囁く。その声はあんまりに震えていて、やけに少女じみ
            ていた。瞳をもう一度じっと見つめれば、そこにはガイ自身がいる。翡翠に映るガイの
                        表情はやけに色が無く、虚ろだった。


                        「ガイ、すきだ」
                         その拙い好きの言い方は、あのころと変わっていないはずなのに。ルークの受け止め
                         るガイの愛は、何も変わっていないはずなのに。
             ひどくむなしくなって、ガイはルークを抱きしめた。ルークの背骨が軋む音がする。
             きっと、ガイの瞳に映っているルークの表情もうつろなのだろう。恐らく、ガイの顔よ
            りもっと。

             こんな形で、受け止めて欲しいのでは決してなかった。本当の本当は、昔みたいな態
            度で良かったのだ。笑い飛ばしてくれて良かった、一蹴してくれて良かったのだ。昔み
            たいに生意気な態度で、そのくせ頬を赤く染めて言い返して欲しかった。
             受け入れられることと受け入れることがこんなに辛いことだなんて、ガイもルークも
            知らなかった。


             もう一度、ガイはルークを抱きしめる。どちらのものか分からない心臓の鼓動は小さ
            く頼りなかった。これが本当に命を紡ぐ物体の音だろうか。



            (これじゃあルークは本当に、人形じゃないか)

             受け入れられたって、受け入れたって、そこにはもう。