言いたいことはあるのに、臆病な自分はそれしか言えなかった。




 思うこととは尊く、美しいことであるが同時に非道く苦痛を伴うことでもある。
 それによって引き裂かれるような痛みに襲われたり、かと思えば滑稽なほど幸せな気
分になったり。
 両極端すぎるそれに身を焦がし、良くも悪くも傷口をつくることが、「思う」ことそ
のものなのだ。

 その思うという行動故に傷つくことを、彼女は知っていたし、けれどだからといって
止める術はないのを重々承知していた。
 

 止めることも何も出来ないのであれば、いっそそれによってボロボロにされた方が良
いと、あっさりと決め込んだ。

 いっそ、引き裂かれよう。癒すことの出来ない傷を負っても、それで諦めきれるなら
安いものなのだから。
 止めることが出来ないのなら、止めてもらえばいい。

 こんな自分に嫌気がさし、反吐が出そうだった。どこまでも、自分は最低だ。本気で
そう思った。

 
 笑っている、いつものように騒いでいる人を見て、彼女はいつものように言った。

「ばーか」

 それしか、言えなかったから。

 「好き」だとかそんな甘ったるくて傷口をかき回すような台詞は、けっして言えはし
ないから。 自殺行為だ。すべてあふれ出して止まらなくなると、彼女は知っている。

 本当の家族ならどんなによかっただろう。きっとずっと楽だった。幸せだった。
 思うことを放棄したいのに、それは出来ない。

 だからどこまでも自分は卑怯なのだ。結局人はどこまでも意地汚く、綺麗なままで何
ていられない。好きな人の幸せを願うのに、ボロボロになってしまえばいいなんて、最
低な思考の持ち主の自分は、特に。
 
 いまだ笑っている人を見て、

「馬鹿」
 とそれだけ言った。



 

 


 暗いですね。またもや。まあ、シリアス題だし。
 名前も何も出していないけれど、蛮←卑です。わあ、私が書くにしては珍しい。
 蛮←卑は本誌やらコミクスで「ちくしょううう!! 卑弥呼ちゃん、あんたソイツと
じゃないほうが幸せになれるよ!!」とか叫びたくなるほどさんざん卑弥呼嬢が切ない
ので、自分で幸せなのかこうと思っているんですがね。 (何だこの文章)
 蛮←卑弥呼ちゃんは見ているこっちが痛いよ…。切ない。