あこがれのおうち


 今日はルークの通院の日で、帰りに散歩をしに公園に向かっていた。珍しく体調の良
いシュザンヌも一緒だ。
「よかったな、ルーク。今度から幼稚園にいけそうだってさ」
「ほんとうっ!?」
 少しだけ前を歩いていたルークは、勢いよく振り返って、ガイのほうへと飛び込んで
きた。
「ほんとうにほんとうにほんとう!?」
「あ、本当だから少し落ち着けって」
 ガイの言葉を聞くと、ルークは「よっしゃ!!」と両手を上げくるくるまわった。
 そしてそのままガイに「だっこ!」とだっこをねだる。それを見るとガイは前じゃ考
えられないほど大きくなったルークの体を抱き上げる。シュザンヌは後ろの方をゆっく
り歩きながら、実の兄弟のような二人を見て微笑んだ。

 ガイは十九歳になって、ルークは春が来れば六歳になる。
 ガイはしっかりとした優しげな青年になったし、ルークも、今でも週一の通院は欠か
せない上、体も他の子に比べれば小さいが、立派な四歳児だ。
「うれしいな、俺、幼稚園に入れるんだぜ!」
「よかったな!!」
 そう言い、ぎゅうっと思い切り抱きしめ、頬をルークの頬にくっつける。
「ガイ、かみくすぐったいよ」
 きゃっきゃっと笑いながらルークもガイにぴったりくっつく。
「ぐるぐるしてぐるぐる!!」
 小さな主人の、命令と言うには可愛らしすぎるおねだりをうけ、使用人はぎゅっと抱
きしめたままぐるぐる回る。

「おろして!!」
 ひとしきりまわると満足そうにルークは手と足をばたつかせた。命令通り下ろしてや
ると、ルークは走り出そうとする。
「公園まで競争だぞ!!」
「あ、ルーク走ると転ぶぞ?」
「ルーク、気を付けて」

  ガイとシュザンヌが同時に制する。
 が、それは杞憂だった。ルークは少し走り出したと思うと、ぴたりととまった。
「? ルーク?」

 止まったと思えば、一点でじっと止まっている。何事かと近寄ってみる。
 よく見ると、ルークの目は何かを見つめていた。その視線の先をよく見てみると、小
さな白い壁に、赤いレンガの屋根の家だった。屋根の上には風見鶏がついていて、風が
吹くたび小さく揺れている。庭にはウッドデッキもついていて、まるで昨日読んであげ
た絵本の中の家のようだった。

「どうしたんだ? ルーク」
「うんと、あのおうち、いいなあって思って」

「可愛いもんな、あのお家」
「うん、俺も、ああいうお家が良いな」
 もう少し見たいのか、背伸びをする。そんなルークの気持ちを察し、ガイはルークを
抱き上げた。

「何でだ? ルークのお家の方がおっきくていいじゃないか」
 ルークの家はいわゆる豪邸だ。おっきくて一般人の家なんて目じゃない。一般人から
すればルークの家の方が憧れだろう。
 ガイが言うと、ルークはガイの襟元をぎゅっと掴んで、ううんとかぶりを振った。
「だって、ああいう家だと迷わないし、ガイや兄上がほかのとこにいてもすぐ会える
だろ!」
 
 きゅん。

 不覚にもときめいてしまった自分が少し悲しい。でも、可愛いのだ。
 こんなに慕われて悪い気はしない。する方が間違っている。

「ルークは、ああいうお家が良いのですか?」
 ゆっくり歩いてきたシュザンヌは、ルークとガイの視線の先を見て言う。
「うん、俺、ああいうお家に住んでみたい!!」

 にこにこ笑ってルークが言うと、シュザンヌは口元に手を当てて思案し始めた。
 そしてしばらくすると、ゆっくり口を開いて、笑いながら言った。

「じゃあ、作らせましょう」


 この台詞を聞いた瞬間、ガイの足下がふらついた。
  
  



 シュザンヌちゃんは最強だと良いな!とか。
 シュザンヌちゃん素敵。後半はかなり好きですあの方。
 お家シリーズはまだ続きます。
 五歳児と銘打ってますがまだ四歳児です。
 個人的にルークは春生まれでガイは夏生まれなイメージ。
 なのでこの話もそんな感じに進みます。
 ティアは梅雨あたりか冬で、アッシュは秋かな?