思い出は大切でしょう? 上  

 ガイは最近質の良い映写機能音機関を買った。何に使うかというと、当然ルークの成
長記録。
 どんどん物事を覚えていくこどもの為に、今出ている中で最も質の良いものを買った
のだ。ルークの専属教育係であるガイのお給料は結構なものだし、前回くまを買っても
貯金はかなり残っていた。そして何よりルークの成長をいいもので残したかったし、ガ
イは音機関が好きだった。
 買ったそれにプラスして色々カスタマイズをしたりしているので、その辺の音機関な
んか目じゃない。

「ルーク! …って起きてないか」
 目当ての赤ん坊といえば、いまだ夢の中のようで指をくわえたまま眠っている。
「…おしゃぶり買ってやった方が良いかなあ…」
 前々から買ってやろうかとは思っていたが、おしゃぶり自体はそこまで重要じゃない
と思っていたのだ。それに歯並びも悪くなると言うし。
 ルークの部屋のドアの前にはホワイトボードがある。それにルークの教育上必要だと
思われるものを書けば資金、もしくはそれが貰える。
 最近はもっぱらおむつとベビーパウダー、粉ミルクだが。

 とりあえず、寝顔だけでもと音機関にスイッチを入れ撮影する。
「やっぱり可愛いなあ」
 この前出かけたときの帰りに何人か赤ん坊を見たが、ガイからすればルークより可愛
い赤ん坊なんていなかった。早い話、親の色眼鏡。
 レンズ越しに見てもやっぱり可愛いわけで。自然に頬の筋肉が緩み何ともまあ、だら
しのない顔になっている。

 この前使用人仲間にルークのことを話したら、「お前は侯爵夫人様より親馬鹿だ」と
言われてしまった。
 まあ、ガイからすれば否定する気もないけれど。

 その日は、ルークの面倒を見つつ映像を録って過ごした。本当は早く寝返りやたつと
ころ、はいはいだって録りたい。けれどいかんせんまだ早いと思うのだ。ゆっくりゆっ
くり、見守っていこうと思う。本当の、親のように。


「ガイ、何をしている」
 感傷に浸りつつ、ガイの方に紅葉のような手のひらを向け、「あー」だの「うー」と
言葉を発しているルークを撮影していると、赤ん坊の兄であるアッシュが現れた。この
子供は、子供らしくなくしっかりとしていて、責任感が強い。
「何って…可愛いルークの成長記録を」 
 真顔でガイが言い放つと、アッシュは「はぁ?」と呆れ顔でそれに返した。冗談かと
も思ったが、ことルークに関してはガイは冗談を言わない。目は真剣そのもの。
「…屑が」
「屑で結構」
 だってルークが可愛いのは事実だからな! となお幸せそうに言ってのけるガイに、
アッシュは溜息をついた。
「…ガイ、ルークを寝かせなくて良いのか」
 アッシュに言われ、ガイは時計を仰ぎ見る。もう二十分足らずで、七時だ。

「そろそろだな…」
 そのとき、ガイの脳内でピカ、と灯りがともった。それはもう、清々しいほどに。
「なあ、アッシュ」
「何だ」

「お前、この後用事ないよな? ここに来たってことは」
「まあ…そうだが…」
「じゃあ、可愛い弟のために、協力してくれるよな?」 
「何が…」
「してくれるよな?」
 有無を言わさぬガイの口調に、思わずアッシュは頷いてしまう。そこが、間違いだっ
たのだが。