非道く耳鳴りがする。同時に、急激に自分が変わっていく感覚、自分が戻っていく感
覚がする。こんなにダイレクトに感じるのは生まれてきて初めてだった。けれどそれど
ころではない。
 ちらちらとちらつく髪の色も、砂嵐のように絶えず揺れ動き霞む手も、全て不快で目
障りだ。こんなのが見たかったんじゃない、こんなのを望んだんじゃない。
 いつの間にか頬を滑る涙は、生ぬるくて血のようで気持ち悪かった。

「…いやだっ!! やめろっ…!! やめてくれ!!」
 顔がぐしゃぐしゃのまま、怒号のように叫ぶ。
「…わりいけど、無理だ」
 内側から通して見る感覚、外側から内側と対話する感覚。二つがごちゃまぜになって
訳が分からなくなる。脳味噌を菜箸でぐちゃぐちゃにされるような。 

「…いやだ…!! いやだいやだいやだ!! やめてくれ、ルーク!!!」
 瞬間、呼ばれた人は笑った。どこまでも優しくて残酷に。

「待ってるから、さ。会いにきてくれよ。…絶対待ってるからな。指切りはできないけ
れど、約束」
 何よりも止めたかったのは振り下ろされる腕だったのに。言うことを聞いてくれなか
った。初めて、この体に生まれたことに対することへの苛立ちを痛感した。

「…やめろっ!!」
 だいすき、そう聞こえたのは、幻だったか。叫びなんて聞こえないというように、閃
光だけがひた走った。


             あなたがひかりだったのに


「俺、障気を消す」
 薄い唇から紡がれた言葉は、どこまでもか細くて頼りなかった。声も体も震えている
のに、瞳だけは前を真摯に見つめていてそれがどうにも痛々しかった。誰もそんなこと
口には出さなかったけど。言ったってどうなるわけじゃないことを、聡いみんなは知っ
ているから。只、口に出さなかった所為で胸の奥がじくじくと針で刺されたように痛か
った。
 視線を下げて、下手くそに笑ってみせたこどもは何処までも浅はかでどうしようもな
く見える。本人だってそんなこと知っているけど、それしか出来なかったのだ。

 こどもが笑ったその次の瞬間、その人は確かにいた。
「…そうやってまた、殺すんだな」
 胸の奥のじりじりとした痛みを、えぐるように睨みつける。この世でこれほど理不尽
なことがあるのかと言うかのように、一人一人をじっと睨みつけていた。

 ああ、かれはもう。

 レムの塔の天辺から見る空は、決して好ましいとは言えない色で憎たらしい。それら
が奇妙に渦を巻いている。
 もうすぐこの色が終わるのだ。そう思った瞬間、すがすがしさがこみ上げてきた。皆
の腹の内に。それは紛れもない背徳の感情だった。

 ひとり(ふたり、なのかもしれない)のなかまと、いちまんものふくせいひんのいの
ちでみなはそれをてにいれる。
 
 













 みじかいですがこのへんで。
 どっぷりと暗くなっていく…。