あいにきたのです 昨日あの後書き終えたノートを大事に持って、ルークは屋敷の外へと飛び出した。 本日も快晴。気持ちの良い空気に嬉しくなる。 「ルークさま、おはようございます」 「ルーク兄ちゃん、おはよう!」 「ああ、おはよう」 今日も良い天気だな、なんて言いながら、ルークは挨拶を交わした親子の息子の頭を 撫でる。最初こそ疎ましい目で見られていたが、今ではバチカルの民とはほぼ顔見知り で気軽に話が出来る仲だ。 きっと、飾らないその人柄がそうさせるのだろう。 「兄ちゃん、おでかけ?」 「うん、ちょっとな」 笑顔で返すと、もう一度頭をわしわしとなで回す。じゃあな、とだけ告げるとそのま ま走り出した。 ノエルに昨日の内に頼んで、アルビオールにのせてもらった。自分の我が侭を、快く 引き受けてくれるノエルは優しいと思う。いい人達に恵まれることは、幸せだ。 「それで、ルークさん、今日はどちらへ?」 「グランコクマだけど、いいか?」 「あ、ガイさんたちに会いに行くんですね。いいですよ。きっと皆さん喜びます」 にっこり笑うノエルに、「ガイたちに会いに行くんじゃない」とは言えず、ルークは 苦笑を浮かべた。そこまで訂正する必要はないし、まあ、ガイたちにも会おうと思って いたから、支障はないだろう。 久しぶりにアルビオールから見る景色は綺麗だった。第七音素が足りないから、きっ とこのうちこれにも乗れなくなるな、なんて思うと少しだけ寂しい。その意識を消すか のように、ルークはふっと、笑って見せた。誰が見るわけでないけど、只笑いたかった のだ。 「じゃあ、私はここで待っていますね」 「あ、いいよ、ノエルも好きなことしてろよ」 「…ありがとうございます。では、ルークさん、お気をつけて」 ノエルの台詞を聞き終わると同時に、ルークは走り出した。 いそげいそげいそげ! 走ったからだけでなく、鼓動が早くなる。 期待感とかそういうものが混ざって、ルークの鼓動はどんどんどんどん早くなってい った。心臓が壊れるんじゃないかと、思うくらいに。 「お久しぶりです。陛下、ジェイド」 「お〜、久しぶりだなルーク。元気か?」 「はい。陛下もお変わりないようで」 「あなたから来るなんて珍しいですね」 「…悪かったな…」 とりあえず、ピオニー陛下とジェイドに会って挨拶をした。久しぶりなのにちっとも 変わっていない。最初帰ってきて、あれから二年たったと聞いたとき、本当にこの二人 は何者なのかと思った。全く老けていないのだから。 やっぱりジェイドは不老不死の法でも持っているのではないかと、少し疑いたくなる。 あんまりこの二人と話しているとボロが出そうだ。極力会話を続けないようにして、 適当なところで切り上げた。そのあとはガイに会った。 相手も忙しそうだったから、あまり話はしなかったが、ガイは十二分に喜んでいたよ うだったし、久しぶりに話が出来てルークも満足だ。久しぶりだから尚更に。 そして、いよいよ本番。 ずいぶんとうまくなった嘘(それでもあのころ旅をしていたみんなには、すぐにばれ るだろう)をついて、二年前に出来たばかりのある場所に入れてもらった。存外みんな すぐに入れてくれたから驚きだ。少しだけ良心が痛んだ。 中は思った以上に薄暗く、肌寒かった。思わず身震いする。 奥に、言ったとおりの場所があって、息をのむ。 最初とは違う気持ちから、鼓動が早くなる。 咽がゴクリとなった。それを聞かなかったフリをして、ドアノブを握り、回した。 するりとドアは感嘆に空いた。 「…誰です?」 机に向かい何か小難しい本に囲まれ、その人はいた。 「…ルーク。ルーク・フォン・ファブレ」 「…何のようです」 「何つーか、その、会いに来た」 いぶかしげな顔をした、ディスト―サフィール・ワイヨン・ネイス―。 その人に、ルーク―実際はルーク・フォン・ファブレのレプリカだった―は意を決し て話しかけた。 やっとやっとで二話目です。 ようやくディスト登場。ガイさま出してあげられなかったね。ごめんね。 ゆるりゆるりと続いていく予定なので何とぞ。