とっかえっこ

「ねえーねえーガイー」
「ん? どうした?」
 未だろれつの回らないルーク。聞き取るのは最初一苦労だが、今ではどんな言葉でも
わかるようになった。俺は何をしているのだろう。復讐が目的だったのに。
 どんどんどんどん溶かされていく。それじゃ駄目だと分かっているのに。

「とっかえっこしよ」

「は?」
 
 あまりにも唐突だった。
 何を。文法をもう少し教えた方が良いのだろうか。
 でも実質今のルークは赤ん坊同然で、脳味噌の容量は生憎足りないらしい。
 …このままで大丈夫なのだろうか。
 行く先が少しだけ不安になった。何も知らない、真っ白な子供。

「うーん…。それで、何を取り替えるんだ?」

 よしよし、と頭を撫でてあげながらゆっくりとした口調で聞く。頭を撫でられるのが
ルークは好きだったから。今も心底嬉しそうに目を細めている。
 ゆっくり話してあげないと聞き取れないらしい。
 聞き取れているというのを確認するように、コクコクと頷きながら、ルークは楽しそ
うに笑った。

 そう言えばこの前あめ玉をいちご味とオレンジ味を交換するとき、「とっかえっこし
ような」と言ったら、しきりに「とっかえっこ…」と呟いていたような。
 とにかく、覚えた言葉が増えるのは良いことだ。そしてそれを使えるようになるのも。
 そんなことを考えていたら、何だか自分は父親みたいだと苦笑した。

「なまえ!!」
「え…??」
 
 ああどうしようか、なおさら分からなくなってきた。
 幼い子供は、考える点がが大人とは全く違う。俺がもう少し幼ければ分かったかも知
れない。けれど悲しいかな、復讐のために普通の子供とは思えないほど、俺は賢くなっ
てしまった。
 俺がおかしいんですか? と脳内で問いかけたが、この場合自分は何もおかしくない
はずという答えが返ってきた。
  とりあえず冷静に考えろ俺、と自分の方へ手を伸ばしているルークをだっこする。そ
うするとルークはきゃっきゃっと声を上げ、「たかーい」と笑った。
 この子供は、ずっと笑っていればいいのに。ずっと。
 復讐するはずなのに、そう願っている自分もいる。
 ルークはのばしていた手で、そのまま俺の頬を撫でながら言った。

「おれとねー、ガイのね、なまえをー、とっかえっこするんだ!」
「…なんでだ?」
 つまりそれは、俺が「ルーク・フォン・ファブレ」になるというわけで。
 …ルークは悪くないけれど、俺は仇の息子なんてまっぴらごめんだ。

「そうすればおれ、そとにでられるだろう!!」

 だって、おれ、ガイだもんな!!

 ああそうか。このこどもは。「ルーク」でなければ。外へと出られると、信じている
のだ。仮に自分の名前が「ガイ」ならば、今の俺と同じような生活が出来ると思ってい
るんだ。
 自分の名前が、「ルーク」じゃなければ。

 

 何て悲しくて、何て綺麗なのでしょうか。

 この子供は。

 その後はもう何も考えれなくて、「ルークはすごいな」としか言えなかった。

 嬉しそうに笑うこどもの髪の毛を、ゆっくりと撫でることしかできなかった。







 何か色々おかしいので後で直します…。
 屋敷時代ガイルクは素敵すぎる。