「ルークの手は、冷たいですね」
「そうか?」
 不意に掴まれた、グローブ無しの手のひら。それを掴んだ人の手のひらは、とても温
かかった。指の一本一本が、温かい。
「はい、とても」
 にこりと笑ったイオンは綺麗で、ルークも思わず釣られて笑った。イオンの白すぎて
不安になる手のひらは、やさしくそっとルークの手のひらを撫でる。ゆっくりと。
 あんまり幸せそうにするものだから、少しだけ居心地が悪くなる。勝手におよぐ視線
が何となく後ろめたくて、それを悟られまいと俯いた。
「こんなに冷たくて、寒くないんですか?」
 イオンは問う。撫でる手はそのままだ。
「別に…。でも、さ」
「何でしょう」
「やっぱり、レプリカだから…劣化してんのかな」
 イオンは、手のひらから視線をルークの頭に移した。けれどルークは俯いていて、朱
色の髪が目元を隠している。イオンの好きな、イオンの髪色を水に溶かしたような目の
色は見えない。
 それが残念な気持ちと、悪いことをしたかなぁと思う気持ちが、イオンの中で器用に
絡まる。兎に角、ルークの気持ちが、少しでもいいから分かりたかった。分かるはずな
いのだけれど。

「ねえ、ルーク、知ってますか?」
「何が」

「手の冷たい人は、心が温かいんです。ルークの手の体温は、きっと、心があんまり温
かいから持ってかれちゃったんです」
 手を、頬に移して、同じように撫でる。頬も、やっぱり冷たくて人形のようだ。思っ
ても、それは口には出さない。
「劣化しているなら、僕の体温も冷たいはずでしょう? だから、ルークの心が温かい
からなんです」
 花のような笑みで、イオンはルークに笑って見せた。その表情にも、口から紡がれる
言葉にも、曇りなんてありはしない。
「…俺の心、温かくないよ」
「温かいです。少なくとも、僕はそう思います」
 もう一度、笑う。ルークの好きな笑みで。
「…ありがとな」
 ルークも、俯いていた顔を上げ笑った。目の色は、透き通っている。
「でも、やっぱりそれ嘘だろ」
「何でですか?」
「イオンの心だって温かいのに、イオンの手、温かいじゃん」
 頬を撫でていたイオンの手を掴み、至極当然というようにルークは言う。
「…ありがとう、ございます」

「あ、そうか」
「どうしました」

「イオンの心があんまり温かいから、手にまで移っちゃったんだな」


 イオンの大好きな笑みで、笑った。












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 ありそうでこのサイトにはなかったイオルク。