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ルークの隣にはいつも同じ人がいた。 ルークより年上の彼は、泣き虫で強がり癖があって、素直じゃないルークを守っていた。ルークを襲う周りや、悲しみ、怒り、理不尽など。ルークを傷つける全てから、守ることが義務だった。 彼にとっての生きる意味は、幼なじみ、ルークを守ることだった。 ルークにとっての安らぎは、彼と共にあることだった。 そう信じて疑わず。 ルークが十七、彼―ガイが二十一になっても、変わることはなかった。 溺 愛 対 象 の 幼 な じ み 「ルーク」 大人の男らしく落ち着いた声で、ガイはルークを呼ぶ。ソファに座っていたルークは、答える代わりにまた一つ涙をこぼした。そんなルークの正面に、膝を折り座るガイは騎士か何かのようだ。 「ルーク」 そんな彼はもう一度、呼ぶ。また一つ、二つとルークの翡翠からぼろぼろ涙がこぼれた。ガイは見上げていた視線を合わせて、ルークの髪を撫でる。 「ルーク」 繰り返す。ついに、翡翠が壊れた。ぼろぼろぼろぼろ、絶え間なく絶え間なく涙がこぼれる。ガイはそれにそっと微笑んで、頬に唇を寄せた。そのまま、落ちてくる涙を、片方は唇で、もう片方は髪を撫でていた指先で拭う。 「痛くないぞ?」 言って、ガイは微笑む。しかし、ルークはふるふる頭を振った。 「痛くねえわけっね、えだろ…! がいの、あほたれ…!!」 喘ぎ喘ぎ、苦しそうな呼吸の元そう言って、ルークはガイに手を伸ばす。白く細い指先が、ガイの頬に触れた。そのまま痛々しい痣や傷跡を撫でる。 「ルークが平気なら、いいんだよ」 ガイはルークの手を握った。薄っぺらい肩が小さく震えた。強くぎゅっと握り直して、そっと瞼に口付けを落とす。またルークは泣いた。 「がいのばか」 そして、ぐしゃぐしゃの顔で笑った。 ルークは泣き疲れたのだろう、すぐに眠ってしまった。その体をガイはルークの自室へと運んだ。ルークの体は確かにずっしりとした重さがあるのに、どこか寂しさが漂っていた。寂寥感がガイの胸に募る。確かにルークの体は細いけれど、病人のよう、なんて訳ではないのに。そんな寂しいルークの体は、白いシーツに埋もれていた。瞼が赤く腫れている。朱色によく似たそれは、白い肌に滲んでいる。シーツに埋もれるルークと同じ色合いだ。 (冷やさなきゃな、) 思いながら髪を撫でていると、部屋のドアが音を立てて開いた。薄暗い部屋に、廊下の光が足を伸ばした。 「ガイ、」 足を伸ばした光の向こう、ふわり、笑うひとがいた。 「おいで」 薄紅の濡れた舌と唇が、妖しく光った。 「どうして、どうして」 鈍い音が響く。ルークとほとんど容姿が違わない彼は、ガイに木刀を振り落とし続けていた。それはルークが稽古を付けるようになったとき、一番最初に買ったものだった。薄汚れたそれは鈍く、固い音を発し続ける。 「どうしてお前が、どうしてお前が」 ぶつぶつ、延々と彼は紡ぎ続ける。手は止まらない。一際大きく音が鳴り、ガイの頭ががくんと揺れた。何処か切れたのであろう、血飛沫が舞った。 「どうして、なんで、お前が」 ぎりぎり、彼は歯を食いしばった。高々と木刀を上げたとき、喘ぎ喘ぎ、ガイが口を開いた。 「ル、カ…」 「呼ぶなっ!!」 瞬間、彼―ルカが叫ぶ。木刀が真っ直ぐにガイの肩に振り落とされた。ガイが息を飲み込む。そのあとぜえぜえと息をした。ルカの手と体はふるふる震え、白く華奢な手からは木刀が落ちた。乾いた音を、どこか遠くでガイは聞いた。耳の奥で鳴っているのは、ガイの心臓と血の流れる音だ。 「お前が呼ぶな、呼ぶな、呼ぶなっ!!」 ヒステリックに、ルカは叫ぶ。暗闇の中で見えるルカの顔はくしゃくしゃで、ガイの血霞んでしまっている。 「お前は狡い、大嫌いだ」 言って、ルークの白い手は、動かない自身の足を抓った。 なんだかとっても長くなりそうなので一旦切ります。 どうしようガイをフルボッコにする短髪さまが超楽しいです。 |